はじめに:SSRI、どれも同じに見えませんか?
「うつ病や不安障害の患者さんにSSRIが出る」
それは日常的な光景ですが、ふと疑問に思うことはありませんか?
- 「なぜこの患者さんはレクサプロ(エスシタロプラム)なんだろう?」
- 「こっちの患者さんはジェイゾロフト(セルトラリン)なのはなぜ?」
添付文書の効能・効果を見ても、書いてあることはほぼ同じ。
しかし、臨床現場の医師たちは、患者さんの「背景」や「訴え」に合わせて、この2剤を明確に使い分けています。
今回は、SSRIの代表格であるこの2剤について、「医師が何を基準に選んでいるのか(処方意図)」 を、薬理学的な特徴やエビデンスを交えて深掘りします。
明日からの服薬指導で、自信を持って説明できる武器を手に入れましょう。
【一覧表】レクサプロ vs ジェイゾロフト 基本スペック比較
まずは、忙しい業務中でもパッと確認できる比較表です。
| 特徴 | レクサプロ (エスシタロプラム) | ジェイゾロフト (セルトラリン) |
|---|---|---|
| 最大の特徴 | 世界一のSERT選択性 (余計な受容体に結合しない) | DAT阻害作用あり (ドパミンも少し増やす) |
| 処方の狙い | 不安・焦燥感が強い時 キレの良さを求める時 | 意欲低下・抑うつが強い時 心疾患がある時 |
| 用量調節 | 10mg → 20mg (シンプルで迷わない) | 25mg → 50mg → 100mg (細かく刻める) |
| 注意すべき副作用 | QT延長 (心電図異常のリスク) | 消化器症状 (吐き気・下痢が多め) |
| 半減期 | 約24時間 (長い) 飲み忘れに強い | 約23〜26時間 (こちらも長い) |
レクサプロ(エスシタロプラム):キレ味鋭い「選択性の極み」
レクサプロの最大の武器は、「とにかくセロトニントランスポーター(SERT)だけを狙い撃ちする」という選択性の高さです。
他の受容体(ヒスタミンH1やムスカリンなど)への余計な結合が極めて少ないため、眠気や口渇といった副作用が比較的少ないのが特徴です。
現場での印象
「不安」や「焦燥感」が強い患者さんに、スパッと効かせたい時に選ばれる印象があります。
用量設定も10mgか20mgの2択に近いので、迷いなく増量できるのもメリットです。
【薬剤師の注意点】QT延長
「副作用が少ない優等生」ですが、唯一の弱点がQT延長(心電図異常)のリスクです。
添付文書でも「重要な基本的注意」に記載されており、循環器系の既往がある患者さんには慎重にならざるを得ません。併用薬(クラリスロマイシンなど)のチェックも重要になります。
ジェイゾロフト(セルトラリン):調整力に長けた「万能選手」
一方のジェイゾロフトは、SSRIでありながら「ドーパミン再取り込み阻害作用(DAT阻害)」も弱く併せ持っています。
これにより、セロトニンで不安を抑えつつ、ドーパミンで「意欲・興味の向上」も期待できるという薬理学的な特徴があります。
現場での印象
「なんとなくやる気が出ない」「楽しみを感じられない」といった、抑うつ気分の強い患者さんに好まれる傾向があります。
また、25mg錠があるため、「副作用が怖いから少量から始めたい」というデリケートな患者さんにも対応しやすい薬剤です。
【薬剤師の注意点】心疾患への安全性
ジェイゾロフトを語る上で外せないのが、「SADHART(サドハート)試験」です。
これは虚血性心疾患の患者を対象に行われた試験で、「心血管系イベントのリスクを上げずに安全に使用できる」ことが示されました。
そのため、高齢者や循環器リスクのある患者さんに対しては、レクサプロよりもジェイゾロフトが第一選択となるケースが多いです。
【結論】医師はこう使い分けている(処方解析の視点)
以上の特徴を踏まえると、処方医の頭の中には以下のようなフローチャートがあると考えられます。
- 「不安・パニック」が主訴、早く治したい
➡ レクサプロ(キレと即効性を重視) - 「意欲低下・無気力」が主訴、または「副作用が心配」
➡ ジェイゾロフト(ドーパミン関与への期待、微調整が可能) - 「心疾患」がある、または高齢者
➡ ジェイゾロフト(SADHART試験のエビデンスにより安全性が高い) - 若年者で服薬コンプライアンスが心配
➡ レクサプロ(1日1回で用量変更も少ないため管理が楽)
まとめ:処方の「背景」が見えれば、服薬指導が変わる
「SSRI」と一括りにせず、この2剤の違いを理解しておくと、患者さんへの言葉かけも変わってきます。
- レクサプロなら…「余計な副作用が少なく、シャープに効くお薬ですよ」
- ジェイゾロフトなら…「心臓への負担も少ない、安全性の高いお薬として有名ですよ」
医師が「なぜこの薬を選んだのか?」という意図を汲み取り、それを安心材料として患者さんに伝えてあげる。
それこそが、私たち薬剤師ができる最大の「薬学的介入」ではないでしょうか。

SSRIの「受容体」をイメージで理解するために
SSRIやSNRIの使い分けは、「受容体のどこに、どうハマるか」をイメージできるかどうかが勝負です。 正直、文字だけの説明で理解するのは限界がありますし、現場でパッと思い出せません。
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