はじめに:アトピー治療は「火消し」から「元栓閉め」へ
長年、アトピー性皮膚炎の治療といえば、ステロイドやタクロリムスといった外用剤による「対症療法(火消し)」が主役でした。
しかし、今は違います。生物学的製剤(バイオ)の登場により、炎症のドミノ倒しの「最初のドミノ(サイトカイン)」を止める、炎症の“上流(元栓)を抑える治療”が可能になりました。
現在、日本で使用できる主要な注射薬は4種類。
「デュピクセント」「ミチーガ」「アドトラーザ」「イブグリース」。
薬剤師として、この4つをどう使い分け、どう服薬指導に活かすべきか?
今回は、添付文書の難しい言葉を噛み砕き、「オリジナルの例え話」を交えて徹底解説します。
\ 添付文書にはない「現場の知恵」 /
1. まずは全体像!主要4製剤のスペック比較表
まずは忙しい先生方のために、4剤の違いを一発で把握できる比較表をご用意しました。
※スマホの方は横にスクロールできます
| 比較項目 | デュピクセント | ミチーガ | アドトラーザ | イブグリース |
|---|---|---|---|---|
| 主な標的 | IL-4/13受容体(IL-4Rα) | IL-31受容体A | IL-13(リガンド) | IL-13(高親和性結合) |
| ざっくり役割 | 炎症の上流を広く抑える | 痒みシグナルを遮断 | IL-13を選択的に抑える | IL-13を強く捕まえて効きが続く |
| 対象年齢 (目安) | 生後6か月以上 | 6歳以上(そう痒が主)※ | 成人(通常) | 12歳以上+体重40kg以上 |
| 投与間隔 (維持期のイメージ) | 2週に1回 | 4週に1回 | 2週に1回(状態により4週可のケースも) | 「2週に1回(状態により4週)」 |
| よく見る副作用 (代表例) | 結膜炎、注射部位反応 | 注射部位反応、(皮膚症状の増悪など) | 結膜炎、注射部位反応 | 結膜炎、注射部位反応 |
| 使いどころ (処方意図の読み方) | 皮疹・痒み含め全体を底上げ/併存疾患込みで考えやすい | とにかく痒みが辛い・睡眠が崩れている | 「スマートに」整えたい、バランス重視 | 通院負担を下げたい(月1回)/安定感重視 |
| 特徴 | 【王道】 使用経験が多い/データ蓄積が豊富 喘息合併例にも◎。 | 【痒み特化】 赤みより「痒み」が 辛い人に最適。 | 【バランス型】 IL-4を残すため 生理機能への影響小。 | 【最新・持続型】 月1回で済む。 結合力が強い。 |
| 薬剤師向けメモ | 効き方は“じわじわ安定”と説明すると誤解が減る | 見た目より痒み改善が先に来やすい、と時間差を説明 | 「副作用少ない=効いてない」誤解を先回り | 早期に結論を急がない説明が継続率に効く |
※ミチーガ補足
年齢や適応により導入時の用量設計が変わることがあるため、初回オーダーは添付文書ベースで丁寧に確認
2. まずは「年齢」でふるいにかける(最重要)
どんなに良い薬でも、適応外では使えません。
処方意図を読む最初のフィルターは「年齢」です。
年齢別・使える注射薬マップ(アトピー性皮膚炎/そう痒の適応)
- 生後6か月〜:デュピクセント(適応の広さ・データ蓄積の“基準点”)
- 6歳以上:ミチーガ(そう痒が強いケースで検討される)
※「13歳以上では導入時に初回量が異なる運用があるため、初回オーダーは添付文書ベースで要確認」 - 12歳以上 かつ 体重40kg以上:イブグリース
- 成人:アドトラーザ
薬剤師の思考
小学生以下で処方されていれば、まずデュピクセントを想起しやすい。
これは「最強だから」ではなく、乳幼児からの適応と長期データが最も蓄積されている“基準点”という意味です。
3. アトピー注射薬「四天王」の薬理と超訳
ここからは、4剤それぞれの「個性(ターゲット)」を深掘りします。
「薬剤師向けのガチ薬理」と、患者説明に使える「うさぎ薬剤師の超訳(例え話)」の2段構えで解説します。
① 王道にして基準点となる「デュピクセント」(一般名:デュピルマブ)
- ターゲット: IL-4/13受容体(IL-4Rα)
【薬剤師向け:ガチ薬理】
IL-4とIL-13は、Th2細胞から放出される「アレルギー炎症の司令塔」です。
デュピクセントは、サイトカインそのものではなく、「受容体(鍵穴)」の方に結合します。
これにより、IL-4とIL-13という2大悪玉サイトカインのシグナルを同時に、かつ完全に遮断できます。効果の「太さ」と「強さ」は随一です。
【うさぎ薬剤師の超訳:インターホンのガムテープ】
細胞を「マンションの住人」、IL-4/13を「しつこいセールスマン」と想像してください。
セールスマンが玄関のインターホン(受容体)をピンポン鳴らすから、住人(細胞)はイライラして炎症を起こします。
デュピクセントは、セールスマンを追い払うのではなく、「インターホンのスピーカーにガムテープを貼る」仕事をしてくれます。
誰が来てもピンポンが鳴らない。だから住人は平和に過ごせる。これが王道の強さです。
② 痒みハンター「ミチーガ」(一般名:ネモリズマブ)
- ターゲット: IL-31受容体A
【薬剤師向け:ガチ薬理】
IL-31は別名「痒みサイトカイン」。炎症そのものよりも、知覚神経に作用して「猛烈な痒み」を引き起こす物質です。
ミチーガは、このIL-31受容体を競合的に阻害します。
抗炎症作用(見た目を綺麗にする力)はデュピクセントに劣る場合がありますが、「そう痒(痒み)」を止める速さと強さはトップクラスです。
【うさぎ薬剤師の超訳:火災報知器の配線カット】
アトピーの痒みは、耳元で鳴り響く「火災報知器の大音量」です。うるさくて眠れません。
ミチーガは、火(炎症)を消すのではなく、「ジリリリ!と鳴っているベルの配線を切る(音を止める)」役割です。
とりあえず音(痒み)が止まれば、人は掻きむしるのをやめます。掻かなければ、皮膚は自然に治っていく。これがミチーガの戦法です。
③ 精密射撃のスナイパー「アドトラーザ」(一般名:トラロキヌマブ)
- ターゲット: IL-13(リガンド)
【薬剤師向け:ガチ薬理】
最近の研究で、アトピーの病態形成の主犯格はIL-4よりも「IL-13」であることがわかってきました。
アドトラーザは、受容体(家)ではなく、放出されたIL-13(物質)そのものをキャッチして無力化します。
最大の特徴は、IL-4をブロックしないこと。IL-4は正常な免疫機能にも関わるため、そこを残すことで「結膜炎などの副作用リスクを低減できる(理論上)」とされています。
【うさぎ薬剤師の超訳:迷惑メールのフィルター】
デュピクセントが「パソコンの電源を抜く(強力な遮断)」だとしたら、アドトラーザは「迷惑メール(IL-13)だけを自動でゴミ箱に捨てるフィルタリング機能」です。
大事なメール(IL-4)はちゃんと届くので、パソコン(体)の正常な機能は保たれます。スマートで負担の少ない、バランス重視の治療と言えます。
④ 最新鋭の猛犬「イブグリース」(一般名:レブリキズマブ)
- ターゲット: IL-13(高親和性)
【薬剤師向け:ガチ薬理】
アドトラーザと同じく「IL-13」をターゲットにしますが、こちらは結合する場所が少し違い、IL-13への結合力(親和性)が非常に高いのが特徴です。
一度捕まえたら離さないため、導入期が終われば「4週に1回」の投与で効果が持続します。
【うさぎ薬剤師の超訳:一度噛んだら離さないドーベルマン】
アドトラーザと同じスナイパーですが、こちらは「逃げる犯人(IL-13)を絶対に逃さないドーベルマン」を放つイメージです。
ガッチリ噛み付いて離さないので、効果が長く続きます。
「注射は痛いから回数を減らしたい…」という患者さんにとって、月1回で済むのは大きなメリットです。
4. 一歩上の選び方。「併存疾患」で使い分ける
「併存疾患」で注射薬を使い分ける視点
薬理作用だけでなく、
患者さんが「アトピー以外に何を併せ持っているか」は、注射薬選択において非常に重要な判断材料になります。
薬剤師としては、
処方薬そのものだけでなく、背景疾患やこれまでの治療歴を含めて、医師の処方意図を読み取る視点が求められます。
① 「喘息」や「鼻茸(好酸球性副鼻腔炎)」を合併している場合
このような症例では、
併存疾患も含めた包括的な炎症コントロールが期待できる治療が選択されることが多くなります。
理由
デュピクセントは、アトピー性皮膚炎に加えて、
- 気管支喘息
- 好酸球性副鼻腔炎(鼻茸)
といった、Th2炎症を背景とする疾患にも適応を持つ生物学的製剤です。
そのため、
- 皮膚症状
- 呼吸器症状
- 鼻症状
を1剤で同時にコントロールできる可能性があり、
治療の簡素化やQOLの向上が期待されます。
このような背景から、
アトピーに喘息や鼻茸を合併している症例では、
デュピクセントが治療の軸として選択されるケースが多い
というのが、実臨床での一般的な流れです。
薬剤師視点の補足
喘息治療薬(ICS/LABA)の使用歴や、耳鼻科での治療歴がある患者さんでは、
「皮膚だけでなく、全身のアレルギー炎症をまとめて抑えたい」
という処方意図が隠れていることがあります。
② とにかく「痒くて眠れない」
── 睡眠障害レベルのそう痒が前景にある場合
皮疹の重症度以上に、
痒みによる生活障害が問題となっているケースでは、
まず「痒みそのもの」を遮断する治療戦略が取られることがあります。
理由
夜間の強い痒みや掻破による中途覚醒が続くと、
- 睡眠不足(睡眠負債)
- 日中の集中力低下
- 掻破行動の慢性化
といった悪循環に陥ります。
このような場合、
知覚神経に作用するIL-31を標的とし、
痒みのシグナルそのものを遮断できるミチーガが選択されることがあります。
痒みが軽減して掻かなくなれば、皮膚は自然に回復しやすくなり、
結果として itch–scratch cycle(痒みと掻破の悪循環)を断ち切れる、という考え方です。
※皮疹の炎症自体が強い場合や、全身症状を伴う場合には、
他の生物学的製剤や外用治療との併用・切り替えが検討されることもあります。
薬剤師視点の補足
「夜、眠れていますか?」という一言は、
病勢評価だけでなく、治療選択の方向性を探る重要なヒントになります。
③ 顔の赤みがひどい(顔面紅斑)が前景にある場合
顔の赤みが強い場合は、
まず鑑別を行ったうえで、機序の異なる治療へ調整されることがあります。
理由
顔面紅斑は、必ずしもアトピー性皮膚炎そのものとは限らず、
- 脂漏性皮膚炎
- 酒さ様皮膚炎
- 接触皮膚炎
- デュピクセント関連の Head and Neck Dermatitis
など、複数の病態が重なっていることがあります。
デュピクセントは稀に、
体幹は改善しても顔の赤みが残るケースが報告されており、
その場合は IL-4/13遮断とは異なる機序の治療へ調整されることがあります。
具体的には、
- 痒みが前景であれば:ミチーガ
- 炎症制御を重視する場合:JAK阻害薬(内服)
といった選択肢が検討されることがあります。
※JAK阻害薬は高い有効性を示す一方で、
安全性や併存疾患を踏まえた慎重な判断が必要です。

薬剤師視点の補足
顔の症状が主体の場合、
「注射が効いていない」と即断するのではなく、
病態の再評価が行われているサイン
と捉えると、処方意図が読みやすくなります。
5. 避けて通れない「お金」の話。実は「4ヶ月目」から安くなる!
バイオ製剤の最大のネックは「価格」です。
3割負担でも、窓口支払いは月額 4〜5万円 ほどかかります(※薬剤費のみの概算)。
「毎月5万は無理!」と諦める前に、日本の最強の保険制度について説明しましょう。
① 高額療養費制度の「多数回該当」
これが魔法の言葉です。
年収にもよりますが、一般的な所得区分(年収約370〜770万円)の場合、ひと月の自己負担上限は約8万円です。
しかし、過去12ヶ月以内に3回以上上限に達すると、4回目からは「多数回該当」となり、上限額が 44,400円 まで下がります。
② 大企業の健保なら「付加給付」(※要確認)
患者さんの保険証を見てください。「〇〇会社健康保険組合」といった組合健保の場合、「付加給付」という独自の上乗せ制度があることがあります。
【⚠ ここが注意点!】
- 国の制度ではありません: 全員が使えるわけではなく、その健保独自のサービスです(国民健康保険や協会けんぽにはありません)。
- その場で安くなるわけではありません: 薬局の窓口では、通常通り支払います。その後、自己負担上限額(例:25,000円など)を超えた分が、数ヶ月後に健保から自動的に(または申請して)銀行口座にキャッシュバックされます。
【薬剤師のキラーフレーズ】
「今は『高い!』と感じるかもしれませんが、この金額が一生続くわけではありません。
日本の保険制度には、長く続けるほど安くなる『4ヶ月目の値下げルール(多数回該当)』があります。
せっかく保険料を払っているんですから、この『安くなる権利』を賢く使って、一番つらい時期を一緒に乗り越えましょう。」
6. 【副作用対策】もし「結膜炎」が出たら?
バイオ製剤(特にIL-4/13阻害系)で頻発するのが結膜炎です。
患者さんは「副作用だ!怖い!もうやめる!」となりがちですが、ここで「多くは点眼でコントロール可能なことが多いです。自己判断で中止せず、眼症状は早めに相談しましょう」と指導できるかがプロの分かれ道です。
- 原因:
結膜の杯細胞(ムチンを出す細胞)の機能にIL-4/13が関わっており、それをブロックすることでドライアイが悪化して結膜炎になる説が有力です。 - 対処法(ゴールデン・スタンダード):
- 軽症(目が乾く、少し赤い): 防腐剤なしの「人工涙液(ソフトサンティア等)」で頻回に洗い流す。
- 中等症(痒い、赤い): 抗アレルギー点眼薬、またはフルオロメトロン等の低力価ステロイド点眼を併用する。
- 重症: ここまで来て初めて眼科医と相談し、休薬を検討。
【アドバイス:市販薬は何を勧める?】
患者さんに「市販の目薬でケアしたい」と言われたら、必ず「防腐剤フリー」のもの(ソフトサンティア等)を勧めてください。
防腐剤入りの目薬を「洗い流す目的」で頻回に使うと、逆に角膜障害のリスクになります。
(防腐剤が入っていないため、コンタクトの上からでもバシャバシャ使えます)
7. Q. 注射を打てば、塗り薬(外用)はやめられますか?
これも患者さんからよく聞かれる質問です。「高い注射をするんだから、面倒なクリーム塗りは卒業したい」というのが本音でしょう。
【答え】いきなりはやめられません。「役割分担」があります。
注射はあくまで「ベースの炎症(ボヤ)」を消すもの。表面の湿疹(残り火)は外用で叩く必要があります。これを「掃除機と雑巾がけ」で例えるとわかりやすいです。
- 注射薬: 「ルンバ(高性能掃除機)」です。部屋全体のホコリ(炎症)を自動で吸い取ってくれます。
- 塗り薬: 「雑巾がけ」です。
「ルンバが走っていても、部屋の隅っこやテーブルの上(局所の湿疹)は、やっぱり雑巾(塗り薬)で拭かないと綺麗になりませんよね?
注射で肌が綺麗になれば、雑巾がけの範囲はどんどん減らせます。でも、完全にピカピカになるまでは、『二刀流』でいきましょう」
注射で安定してくると、「外用の頻度・強さを減らせる」のが現実的なゴールです。

8. Q. いつから効く?「注射なのに、すぐ効かない」理由
「注射ってことは、打ったらすぐ劇的に良くなるんですよね?」
実は、これもよくある誤解です。
アトピー注射薬の効果は、“数日”ではなく“数週〜数ヶ月”で評価します。
【なぜ時間がかかるのか?】
これらの薬は、痛み止めやステロイドのように今出ている炎症を直接叩く薬ではありません。
免疫の司令塔であるサイトカインの流れを変え、体質そのものを「炎症が起きにくい状態」へ作り替える治療です。
【うさぎ薬剤師の超訳:都市計画】
- ステロイド外用: 今燃えている火を消す「消火器」
- 注射薬(バイオ): 火事が起きにくい街に作り変える「都市計画」
街の作り替えには、どうしても時間がかかります。
【目安となるタイムライン】
注射開始
│
├─ 1〜2週間
│ ・かゆみが少し軽くなる
│ ・夜に掻き壊さず眠れる日が出てくる
│ ・「あれ?前よりマシかも?」と感じ始める
│
├─ 1〜2ヶ月
│ ・掻き壊しが明らかに減る
│ ・赤み・ゴワつきが落ち着く
│ ・外用薬の量が少しずつ減る
│
├─ 3〜4ヶ月(ここで評価)
│ ・良い状態が安定して続く
│ ・「この薬、合ってるかも」が判断できる
│
└─ もしこの時点で…
・かゆみは止まらない
・副作用がつらい
・生活に合わない
↓
▶ 薬剤変更・調整(よくある、正常な流れ)
注射薬は「即効性の薬」ではありません。
最低でも2〜3回(約3ヶ月)使ってから評価するのが基本です。
9. Q. 合わなかったらどうする?「薬を変える」のは失敗ではない
「もし効かなかったら、この注射は失敗なんでしょうか?」
答えは NO です。
途中で薬を変えることは、アトピー治療では全く珍しくありません。
【なぜ切り替えが起こるのか?】
アトピーは「1つの病気」ではなく、痒みが強い人・炎症が強い人・喘息を合併している人など、病態が人によって大きく異なります。
そのため、「痒みは止まったけど赤みが残る」「皮膚は綺麗だけど目の副作用が辛い」「効果はあるが通院頻度が負担」といった理由で、機序の違う薬へスイッチすることはよくあります。
【これは「失敗」ではなく「微調整」】
治療のやり直しではありません。「体質に合う鍵を探している途中」です。
最初の薬で8割良くなり、次の薬で9割、10割を目指す。そんな段階的な治療設計が、今のアトピー治療のスタンダードです。
【薬剤師から患者さんへの一言】
「最初の注射がゴールじゃありません。
合わなければ、次の選択肢があります。
焦らず、一緒に“一番楽な状態”を探していきましょう。」
この一言があるだけで、患者さんの治療継続率は大きく変わります。
10. 注射薬ごとの「効き方の違い」──患者さんが実際に感じる“体感差”
同じ「アトピーの注射薬」でも、効き始め方/最初に変わる症状/患者さんの言葉には傾向の違いがあります。
この違いを押さえておくと、
- 効果判定のタイミングを誤らない
- 「効いてないかも…」という不安を先回りできる
- 不必要な早期中止を防げる
という形で、服薬指導の質が上がります。
デュピクセント:全体を底上げする「安定型」
患者さんの言葉(例)
- 「全体的に落ち着いてきた」
- 「ゴワゴワが減った」
- 「前ほど悪化しなくなった」
体感の特徴(傾向)
- 痒み・赤み・湿疹がバランスよく改善
- 劇的というより“じわじわ底上げ”
- 外用量が少しずつ減っていく実感が出やすい
薬剤師的コメント
- “上流”を広く抑えるぶん、「悪化しにくくなった」=効いているサインになりやすい
- 即効性を期待しすぎると「思ったより…」となるので、評価の時間軸を先に共有しておくと◎
ミチーガ:痒みを止める「スイッチ遮断型」
患者さんの言葉(例)
- 「とにかく痒くなくなった」
- 「夜に掻かずに眠れた」
- 「目が覚めなくなった」
体感の特徴(傾向)
- 痒みの改善が先行
- 見た目(赤み/湿疹)は“あとから追いつく”ことがある
- 睡眠の質が早期に改善しやすい
薬剤師的コメント
- 「見た目が残っている=無効」ではなく、痒み→掻破減少→皮膚回復の時間差を説明すると安心につながる
- 13歳以上は初回量が異なる点も、導入時に一言あると事故が減る
アドトラーザ:見た目も含めて整える「スマート型」
患者さんの言葉(例)
- 「赤みが引いてきた」
- 「顔が前より落ち着いた」
- 「負担が少なく感じる」
体感の特徴(傾向)
- 皮疹の見た目の変化が“分かりやすい”と感じる人もいる
- 痒みはマイルド寄りに感じる場合も
- 全体として穏やか
薬剤師的コメント
- 「副作用が少ない=効いていない」ではない(期待値調整が大事)
- 適応は通常成人なので、年齢確認は基本動作
イブグリース:効き始めると崩れにくい「ロングラン型」
患者さんの言葉(例)
- 「次の注射まで落ちない」
- 「効いてる感じが長く続く」
- 「通院が楽になった」
体感の特徴(傾向)
- 立ち上がりは穏やかに感じることも
- 乗ってくると安定感が強い
- 月1回投与の生活メリットが大きい
薬剤師的コメント
- 早期に結論を出さない説明が大事
- 12歳以上+体重40kg以上の条件は、受付〜監査で必ず拾う
まとめ:体感差=「効いていない」ではない
- デュピクセント:全体を底上げする「安定型」
- ミチーガ:痒みを止める「スイッチ遮断型」
- アドトラーザ:見た目も含めて整える「スマート型」
- イブグリース:持続力で支える「ロングラン型」
どの薬も、効き方が違うだけで優劣ではありません。
そのまま使える一言
「この注射は“どこから良くなるか”が人によって違います。最初は痒みだけ、見た目だけ、ということも普通です。数ヶ月かけて“全体が楽になるか”を一緒に見ていきましょう。」
「※本記事の“効き方の体感”は臨床現場でよく聞く傾向であり、個人差があります。(最終判断は主治医)」
まとめ
- 小学生以下ならデュピクセント一択。
- 痒み特化ならミチーガ、スマートさならアドトラーザ/イブグリース。
- 結膜炎は「中止」ではなく「点眼で管理」。
- 塗り薬は「ルンバと雑巾がけ」の関係で併用する。
注射薬は「魔法の一発」ではありません。 時間をかけて効かせ、必要なら調整する。 そのプロセス自体が、現代のアトピー治療です。
「注射=デュピクセント」の時代は終わりました。
それぞれの薬剤の「個性」を理解して、患者さんのライフスタイルや悩みに寄り添った服薬指導をしていきましょう!


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